こっちを向いてよ、ダーリン!
――なんなの?
何でなの?
二人とも、訳が分からないよ。
こんなの……イヤ。
バッグを抱えると、さっと立ち上がって部屋を飛び出した。
「沙羅!」
「沙羅ちゃん!」
二人の声を振り切って、転がり落ちるように階段を駆け下りる。
あの場所から離れたかった。
とにかく、二人から逃れたかった。
その勢いのまま店を出ると、深夜を迎えようとする街は、私の心とは対象的に静かな時を刻んでいた。