こっちを向いてよ、ダーリン!

◇◇◇

学校を終えて着いた陽だまりのカウンターに、見知った背中を見つけて、引き返そうかと一瞬躊躇った。


「沙羅ちゃん、お疲れ様」

「……お疲れ様です」


マスターに声を掛けられ、それは実行不可能になってしまったけれど。

食後のコーヒーを飲んでいるらしい先生は、私に気づくと、罰が悪そうに軽く微笑んだ。


「忘れ物だ」


そう言って先生がカウンターに置いたのは、夕べ返してもらい損ねた私の携帯だった。


「先生が私から取り上げたんじゃないですか」


変な言いがかりはやめてほしい。

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