こっちを向いてよ、ダーリン!

先生は運転席から降りると、車の前方で大きく伸びをして深呼吸。
終了と同時に私の方へ振り返って、なぜか満面の笑みを浮かべた。

何のアピール?
顔をしかめると、早く降りて来いと全身を使って私を呼ぶ。

渋々車から出ると、冷たい風ではあるけれど思いのほか爽快で、悔しいけれど深呼吸をしてしまった。


「どうだ、いい気持ちだろ」

「はい。先生とここへ来たことも忘れるくらいに」

「……お前なぁ」


ベーっと舌を出してあげた。

どうも、先生には意地悪なことを言ってしまいたくなるらしい。
つい可愛げのない言葉ばかり選んでしまうのは、どうしてなのか。

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