こっちを向いてよ、ダーリン!

「少し歩くか」


おもむろに私の手を取ろうとした先生。
咄嗟にその手をスッと引っ込めた。


「おいおい。男女が並んで歩く時は、手を繋ぐものだ」

「……どういう理論ですか」


そんなの、初めて聞いた。


「え? なに、知らないのか、沙羅ちゃんは」

「……知りません」

「いいから、貸せ」

「な、何するんですかっ」


強引に取られた手は、離れないように強く握られてしまった。


「こうでもしないと、いつ脱走するか分からないからな」

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