こっちを向いてよ、ダーリン!

先生は、一度確認したきり、ずっと無視を決め込んでいた。


「ああ、大した用事じゃない」

「病院からの呼び出しじゃないんですか?」

「違う違う。余計なことを心配しなくていい」

「それならいいんですけど……」


そうしているうちにも、また震え始めた携帯。
先生は面倒くさそうに電源を落としてしまった。


「美味しくないのか?」


お腹は空いているはずなのに、なかなか進まない食欲を見て、先生が心配そうに顔を窺う。


「いえ、美味しいです」


そう言ってみたものの、いろんなことが頭を駆け巡って、じっくり味わうこともできなかった。

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