こっちを向いてよ、ダーリン!

いつかこうなることは、私だって分かっていたのに。

私の存在が邪魔になるときが来ることくらい。


「……沙羅?」


中を窺うように静かにドアが開けられ、圭くんが入ってきた。
ベッドで小さくなる私の頭をポンと軽く撫でると、そのそばへ腰を下ろす。


「ごめんな。沙羅がくれたもの、どこかに置き忘れるなんて」


……『どこか』って、どうしてそこで誤魔化すのか。

全部知っていると言うのに。
圭くんの新しい恋人が持ってきたというのに。


「私、この部屋出て行こうかな」


圭くんが小さく「えっ」と呟いた。

< 24 / 276 >

この作品をシェア

pagetop