こっちを向いてよ、ダーリン!

でも、どうやってここから帰る?

先生にこれ以上、手間を掛けさせたくはない。

黙ってここから立ち去ることには胸が痛んだけれど、それよりも、いち早く心を解放させたかった。


フロントで聞いたところによると、ホテルから駅までの直通バスがあるらしかった。
今なら最終のバスに間に合うということだった。

駅まで行けば、何とか自力で帰れる。

先生から携帯を返してもらっていないことに気付いたのは、バスに乗り込んでしばらく経ってからのことだった。


どうしよう。
……でも、これが最終のバスなら、引き返している時間はない。
携帯は諦めよう。

バスの座席に深く腰を埋めた。

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