こっちを向いてよ、ダーリン!

「ちょ、ちょっと待って。だって、真奈美さんは?」


どうして、いてもたってもいられなくなるの?
圭くんにとって、私はそういう存在ではないはずでしょう?


「話さなきゃならないことがある」


私を引き離すと、圭くんは真面目な顔で私を見つめた。

どんなことを言われるのか、小さな恐怖につい怯える。

圭くんの口が次に開くまで、止まってしまったんじゃないかと錯覚するほど、長い時間が流れたように感じた。


「真奈美さん、退院したんだ」

「……そう。よかったね」


これで、圭くんは病院に付きっきりじゃなくなるんだ。

身体を壊す心配もない。
それは何より嬉しかった。

< 247 / 276 >

この作品をシェア

pagetop