こっちを向いてよ、ダーリン!

「私がいつまでもいたら、圭くんがいろいろと困るし」


いろいろ、というところを強調する。


「どうして困るんだ? このマンションは沙夜子さんと一緒に買ったものだから、娘の沙羅には住む権利がある」


住む権利?
所詮はその程度の女なのだ。

権利さえなければ、出ていくことに賛成だとも取れる圭くんの答え。


「……ねぇ、圭くん……ママのこと、もう忘れちゃったんだね」


戸惑う空気が圭くんから漂ってくる。
顔を見なくても分かる、困った様子。

本当は圭くんを困らせるようなことは言いたくない。

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