こっちを向いてよ、ダーリン!

「しつこいぞ」


言うなり、塞がれた唇。
それ以上、念押しすることは叶わなくなった。


唇が触れ合っているだけなのに。
身体が震えて、脳内まで痺れていく。

細胞が一つ残らず、圭くんを求めているようだった。


心から好きな人とのキスは、こういうものだったんだと初めて知った気がした。


ひとしきり交わした口づけが、私たちを急激に近づける。
けれど、改めてそうなってしまうと、恥ずかしさが込み上げて、圭くんの顔さえまともに見られない。

唇は離れたものの、至近距離のままの視線から逃れるように、圭くんに抱きついた。


「ところで、沙羅は何でホテルを抜け出したんだ?」

「それは……圭くんに会うため」

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