こっちを向いてよ、ダーリン!
「俺に?」
「……圭くんに振られに行く途中だったの」
どういうことかと、圭くんが首を傾げる。
「先生に言われたの。ちゃんと言葉で想いを伝えたことがあるのかって。きちんと伝えた上で圭くんにはっきり振られないと、いつまでも引きずるだけだって」
「……健二がそんなことを?」
うんと頷いた。
「だから今こうして、電車に乗ろうと思って駅に……」
「一人で帰ろうとして、か」
小さく「バカだな」と呟くと、圭くんは私をもう一度引き寄せた。
髪を撫でる手の温もりを改めて実感して、胸がいっぱいになる。