こっちを向いてよ、ダーリン!

ううんと、首を横に振った。

真奈美さんも圭くんのことを本当に好きだったんだと思うから。
だからこそ、手段を選んでなんかいられなかったんだ。

私が裸で圭くんに迫ったのと同じこと。
真奈美さんとのことは、仕方のないことだったんだと思える自分に驚いた。

それは、圭くんが手を伸ばせば届くところにいるからなのかもしれない。

欲しくてたまらなかった圭くんが、こうしてすぐそばにいるから。


「健二のキスを消すため」


そう言って落とされたのは、息も止まるほどの長い口づけだった。

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