こっちを向いてよ、ダーリン!
「とにかく、健二には悪いことをしたと思ってる。沙羅にバイトまで紹介してくれたり、いろいろ面倒もみてもらったみたいだし」
「そんなこと、圭には言われたくないけどね」
へそはまだ曲がったままらしい。
先生は斜めに腰を掛け直すと、窓の外へとわざとらしく視線を外した。
そんな姿がなんだか子供みたいで可愛いと思ってしまう私は、どこかおかしいのかもしれない。
「先生……私、もしも圭くんがいなかったら、先生のことを好きになってたと思います」
これは決して慰めではない。
反発して、可愛げのない態度を散々取ってしまったけれど、どこか憎めないところのある先生のことは、無理矢理キスをされても嫌いになれなかったから。
「それじゃ圭、今すぐ消えてくれ」
またしても、圭くんの無言の圧力が、先生に「冗談だ」と言い換えさせた。