こっちを向いてよ、ダーリン!

「沙羅ちゃん、愛のみせかけは、憎しみよりももっと悪いっていうプリニィの言葉を知ってるか?」


急に真面目顔になった先生。
私まで背筋を伸ばすような、ちょっとした緊張感に包まれた。


「圭という存在がいる事実は、変えようのないこと。それなのに、沙羅ちゃんにそんなことを言われたら、ちょっとした期待を捨てきれないままじゃないか。
いいか? 振るときは、徹底的にバッサリとしなくちゃダメだ。嫌いだと言われた方が、よっぽどいい」


ハッキリしないまま、圭くんへの想いを断ち切れなくて苦しんだのは、私も同じなのに。
気を持たせるような言い方は、逆に失礼になるんだ。

でも、さすがに「嫌い」だなんて嘘は吐けない。


「先生、私……圭くん以外には誰も好きになれません」


それが精一杯だった。
先生は一瞬見開いた目をすぐに細めて笑った。

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