こっちを向いてよ、ダーリン!

◇◇◇

ママの大好きだったガーベラの花束を抱え、私たちが向かったのは、ママが眠る墓地だった。

降り出したやわらかい霧雨の中、ひとつの傘を圭くんとシェアする。
いつもなら見かけるお参りの人影は、雨のせいかどこにも見えなかった。

ママの墓石の前まで来ると、圭くんが差す傘の下から一歩下がった。


今までとは違った私たちの関係性に、ママはもう気づいているだろうか。

どうしても感じてしまう後ろめたさが、圭くんと並んで立つことを躊躇わせる。


「沙羅?」


どうかしたのかと、圭くんが振り返った。


「……圭くん、先にお参りしちゃって」

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