こっちを向いてよ、ダーリン!
茜に話せなかったのは、口に出すことで、その気持ちが拍車をかけていくことが怖かったから。
圭くんを好きだと言葉にしてしまうと、それが現実味を帯びて、叶わない願いがむなしく感じてしまうから。
願いは、所詮、願いだということ。
決して現実に取って変わったりなどしない。
高校生のときから圭くんに囚われ続けた私は、この先どうしていけばいいんだろう。
自分じゃとても解けない難題に、どんどん四方を固められていく。
店員が運んできたウーロン茶をがぶ飲みした。
そうすることで、身を結ばない恋心を奥深くに呑み込んでしまうように。
「年上が好きならさ、大学にいる校医はどう?」