こっちを向いてよ、ダーリン!

少しずつ記憶を遡っていく。

茜と居酒屋でご飯を食べて……そのあと眠気に襲われて……そのまま眠って、茜に送ってもらったってこと?

新しい記憶がよみがえると、今度は夕べ、圭くんにヒドイことを言ったときのことが瞬時に再生され、気まずさが押し上げてくる。


圭くんは私が言ったことをどう思ってるんだろう。


『ママのことを忘れるなんて、ヒドイ』


なんてこと、きっと傷ついたに違いない。


「酒、飲んだんだって?」

「ウーロン茶のはずだったんだけど……」


まだ頭がぼんやりするということは、やっぱりお酒だったんだろう。
これじゃ、ますます子供っぽいと思われるに違いない。

どこをどうしても、私には行き止まりの看板ばかりで、気分は落ち込む一方だった。
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