こっちを向いてよ、ダーリン!

「何を言ってるんだか。ろくに飲めもしないくせに。大人しくそれでも飲みなさい」


出されたコーヒーに頬をふくらませたのに、冷たくあしらわれた。


完璧に私の一人芝居で終わってしまった、圭くんとの生活。

あんなこと、言わなければよかった。
そうすれば、もう少しだけでも一緒にいられたのに。

それが、たったの一日でも二日でも、私にとっては、貴重な、何よりも大切な圭くんとの時間だったのに。
私から出て行かなければ確実に保証された、私のポジションだったのに。


「茜、しばらくここに置いてね」

「どうする気なの?」

「あの部屋は出る。アパート捜すわ。だからお願い、それまで置いて?」

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