こっちを向いてよ、ダーリン!

手を合わせて茜にねだる。


ここ以外に行くところなんてない。
あそこまでしておいて、のこのこ一緒に暮らせるわけもない。


「しょうがないわね。ほんとに世話の焼ける子だわ、沙羅は」


そうは言うけれど、茜が私を放っておけないくらい世話好きなことくらいはお見通しなのだ。

本当は、もっと早くあの部屋を出るべきだったのかもしれない。

気持ちの上では一緒にいたいけれど、現実問題として、ありえない私たちの関係。
いつか振り向かせたいと思う反面、圭くんにいつ新しい恋人ができるか不安いっぱいで。


いくらママも出資したマンションだからと言って、娘の私を置いておく義理など圭くんにはないのだから。
今まで置いてくれたことこそ、奇跡に近い。

何年もの間そばに居過ぎたから、圭くん以外が目に入らなかっただけ。
離れてしまえば、簡単に気持ちは移ろいゆくもの。

きっと、つらい気持ちは長くは続かない。
そう信じて――……


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