こっちを向いてよ、ダーリン!
「じゃ、どういうことなの? ちゃんと説明しなさいよ」
茜の怒った顔は見慣れているはずなのに、美しいからこそ迫力があって、友達の私も震え上がらせる。
そばにいた先生も、驚いて目を丸くした。
「あのね、それはね、」
「それじゃ、沙羅ちゃん、俺は失礼するよ。また後で」
逃げるつもりらしい。
ヒラリと手を振って、先生は私たちに背を向けた。
火種だけまき散らして退散なんて、ひどすぎる。
軽くひと睨みしたけれど、背中相手じゃどうにもならない。
「“また後で”?」
茜が強調して繰り返す。
先生が余計な一言を付け加えたせいで、茜の声が更に大きくなった。