こっちを向いてよ、ダーリン!
真っ白い要塞。
そんな言葉がぴったりの大きな総合病院の前で、タクシーは停められた。
……そういえば。
お弁当の入ったバッグを胸に抱え、入口の自動ドアを抜けたところで足を止める。
大事なことを聞きそびれてしまったことに気付いたのだ。
怪我した人って誰なんだろう。
名前は?
それが分からなければ、ナースステーションで確認することもできない。
病院内のこと。
圭くんの携帯も切られているかもしれないというのに。
そう思いつつ、圭くんの携帯を鳴らしてみたけれど、案の定、携帯は繋がらなかった。