こっちを向いてよ、ダーリン!

「昨日、救急車で運ばれたと思うんですが……」


ダメもとで聞いた総合案内では、患者の名前すら知らない私は、当然のごとく門前払いだった。


……どうしよう。
思い付きで行動したりするから、こんなことになるんだ。
最初に、きちんと圭くんに聞いてさえいれば……。


行く当てもなく、ふらふらと院内を彷徨っていたときだった。
ふと、圭くんに似た後ろ姿を遠くに見かけて、バタバタと追いかける。


「圭く――」


その距離、数メートルというところで、足も口も止めざるを得なかった。


あの人……。

< 94 / 276 >

この作品をシェア

pagetop