こっちを向いてよ、ダーリン!

圭くんが押す車椅子に乗っていた、見覚えのある顔。


怪我をしたのって、あの人だったの?
圭くんを庇ったのが、あの人……?


右足をギプスで固められた痛々しい姿なのに、どこか嬉しそうな横顔は、圭くんの腕時計を返しに来た、あの坂下真奈美さんだった。


嘘、でしょ……。


手の力が抜けて、お弁当を床に落としてしまった。

聞いてもいないのに、勝手に男の人だと思っていた私。
それは大きな誤解だった。


「あの、大丈夫ですか?」


そばを通りかかった看護師に声を掛けられて、そこでようやく我に返った。

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