こっちを向いてよ、ダーリン!
「……大丈夫です……すみません」
看護師さんから拾ってもらったお弁当を受け取り、顔を上げると、既にそこに圭くんの姿はなかった。
「坂下真奈美さんの病室は……?」
ナースステーションで聞いた病室の前まで行くと、ほんの少しだけ開いていた扉。
そこから、こっそり中を覗き見ると、圭くんが彼女を車椅子からベッドへ移そうとしているところだった。
……やだ。
そんなこと、しないで。
抱き合うような格好になった二人に、思わず目を背けた。
「ありがとう、伊沢くん」
聞こえてきた彼女の声が、腕時計を部屋まで届けに来たときの言葉を思い出させた。