Like Cats and Dogs
何故……こんなことになってしまったのだろう。
今、私は寝室のベッドでシーツにくるまりながらぼんやりと天井を眺めている。その私をしっかりと抱きしめているのは猿渡 真也。
長年の宿敵に抱きしめられて、心地よいなんて―――思っちゃう自分がイヤ。
しかも昨日は一回に飽き足らず二回もしてしまったし。
カー!
考えたら顔から火が出そう。
けれど夢はいずれ覚める。明けない夜なんてない。
猿渡のこれまた整った寝顔を眺めて
「大丈夫よ?私、彼女にして。なんて言わないから。
猿に噛まれたと思ってなかったことにするわ」
我ながらバカなことをしたと思うけれど短い夢を見たと思えばいいのよ―――週明けからはまた犬猿の同僚。
一人もの想いにふけっていると
「うっせ。俺はこー見えて身持ちが硬いの。寝た女は恋人にするって決めてんだよ。
勝手に決めつけんな」
猿渡がうっすら目を開いてぎゅっと私を抱きしめてくる。
「恋人って……何勝手に決めてんのよ!」
「朝からキャンキャンうっせぇな。これだから犬は良く吠える。
ジャーキーやるから静かにしな」
「何ですって!あんたこそバナナ抱っこして寝てればいいのよ!」
「ぁあ゛!可愛くねぇ。だからドーベルウーマンなんつー名前がつくんだよ!」
「ジャーキーもバナナもいいけれど、とりあえずスコーン食べない?」
夜明けのスコーンなんて聞いたこともないけど。
「うん♪」
猿渡の見たこともない可愛い笑顔に、早くもKO。白旗を上げそうになる自分がイヤ。
私たちはこの日を境に単なる同僚から恋人同士になったわけだけど―――
「スコーンてさ、ぼそぼそしてて俺嫌いなんだよね」
「じゃぁ食うな」
やっぱり犬猿コンビだ。