Like Cats and Dogs
自分の気持ちが分からず、もやもやしながら私は洗面台に手を突いた。
この苛々は何だろう。
考えても考えても分からず私はため息を吐いて外に出ると、そこには先輩室長が待ち構えていて―――
「大丈夫?犬井さん」
と、さも心配そうに駆け寄ってくる。
ビ……くりしたぁ
まさか待ち構えていたなんて………
と言うのも、私は半月前からこの先輩室長に口説かれている。食事を一緒に…からはじまって、家まで送るよ、までに発展したこの行動は半ストーカー状態だと言ってもいい。
もちろん、彼の気持ちは見え見えだからそのどの誘いも乗らずにうまくスルーしてきたつもりだけど。今回ばかりは無理そう……?
「いえ……大丈夫です…」そう断ると
「猿渡のヤツ、犬井さんの大事なスーツに染みなんて作りやがって」
と先輩室長は大げさに舌打ちをする。
「いえ、本当は安物なので気にしないでください」
慌てて言って、早くこの場を逃げ出したい一心だった私はくるりと踵を返した。
「待って!」
ぐい、と腕を掴まれて掴まれた腕から嫌悪感がじわりじわりと広がっていった。
「あの……離してくださいっ」
思わず手を払おうとすると、その手を誰かの手が掴んだ。
「犬井―――わり。俺がこぼしちまったから、新しいスーツ
俺が買ってやる」
現れたのは猿渡で。こいつはいつになく真剣な顔で私の腕を掴んでいた。
え―――――……