Like Cats and Dogs
あまりの至近距離にびっくりして目をまばたきさせる。
間近で見た猿渡の顔は認めたくないけどやっぱり整っていて―――女の子が惚れる理由が分かったりするかも。
じっと見惚れているのが何だか恥ずかしくて、慌てて顔を逸らそうとすると
私の顎に手を添えて猿渡が自分の方へ向かせる。
「俺―――お前のそういう表情好き。
伏せ目がちで、口元に淡い笑みを浮かべて―――向かい合ってるものやことが本当に好きなんだなって愛情を感じる、
その表情がすっげぇ好き。てかきれい」
きれい――――……?
「それと反対に俺の顔見ると思いっきり顔をしかめるのも好き。
少なからず俺のこと意識してくれてんじゃん?」
「あんた……相当酔ってるね。意識なんてこれっぽっちもしてないわよ。自意識過剰もいいとこ」
私が顔を逸らそうとすると
「酔ってるなんて嘘。
口実作りゃお前のことだから家にあげてくれるかな、って思ったわけ。
俺ずっと―――お前のこと」
好き
最後の言葉は
やや強引とも言える口づけでかき消された。
な に ―――――
唇が離れると
「なぁ犬井、俺ずっとお前のこと好きだったんだ。
会った瞬間からずっと―――
でもお前は俺のこと大嫌いだったろ」
ううん
と否定できない私。
だって大嫌いだったから。
大嫌いなのに―――猿渡のキスが気持ち良いって感じる。