夫婦の定義──君が僕のすべて──
家の中に入ると、直子はハーブティーを淹れてテーブルに置いた。

「レナちゃん、ハーブティーでも飲まない?」

直子は、窓際に座ってボンヤリと庭を眺めているレナに声を掛ける。

レナが立ち上がってイスに座ると、直子は優しく微笑んだ。

「私は好きなんだけどね、テオはハーブティーが苦手で、一緒に飲んでくれないの。」

“いただきます”

レナが小さく口元を動かすのを見て、直子はカップに口をつけた。

「ユウも言ってたけど、自分の家だと思ってゆっくりしてね。」

レナはハーブティーを一口飲んでうなずく。

「朝早かったから、もし疲れたり眠くなったら休んでいいわよ。後で部屋に案内するわね。」

虚ろな目でハーブティーを飲んでいるレナを見ながら、直子は胸を痛めていた。

(かわいそうに…。よほどつらい事があったのね…。)

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