夫婦の定義──君が僕のすべて──
直子は静かに話を続ける。

「お父さんがいないと兄弟はできないって言ったら、次の年の七夕には“レナとけっこんしてかぞくをいっぱいつくる”って書いたの。そうすれば自分も、私も、レナちゃんもリサさんもみんな寂しくないって。子供のくせに親に気を遣って生意気だって思った…。」

直子は遠い記憶に思いを馳せて、写真の中で笑う幼い頃のユウを愛しそうに見つめる。

「親からはユウがいる事で結婚に反対されてたし、ユウの父親が亡くなってからは再婚も勧められたけどね…。再婚すればユウの願い事を叶えてあげられたのかも知れないけど、私はやっぱり、実の母親の分も、亡くなった父親の分も、私のありったけの愛情を込めて、ユウを自分の手で育てようって決めて、ユウが私の手を必要としているうちは再婚しないって言ったら、それで両親とは疎遠になった。結局、自分の子供を産む事はできなかったし、孫を抱かせてあげる事もできないまま両親は亡くなったけど…それでも私は、ユウが私の子供になってくれて良かったって、今でも思ってる。」

レナはうつむいたまま、直子の言葉を聞いている。

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