夫婦の定義──君が僕のすべて──
「ごめんね。ユウには、レナちゃんに子供の話はしないで欲しいって言われてたけど…。」

レナは驚いたように顔をあげた。

(ユウ…私に気を遣って、直子さんにそんな事言ってたんだ…。)

「私もテオも、ユウとレナちゃんに子供ができたら…って楽しみに思う気持ちはもちろんあるわ。これから好きな人の子供を産む事ができるレナちゃんを羨ましいとも思う。でもね…私には妊娠も出産も経験のない事だから、レナちゃんが不安に思う気持ちはよくわかるの。親に孫を抱かせてあげられない罪悪感も、すごくよくわかる…。」

直子はレナの手をそっと握った。

「でもね…私たちに気を遣って無理をする事なんてないのよ、レナちゃん。ユウの一番の願い事を叶えてくれただけでも、本当にありがたいって私は思うし、レナちゃんが娘になってくれて嬉しいの。レナちゃんみたいな娘が欲しいって、ずっとリサさんが羨ましかったから。」

そう言って直子は、愛しそうにレナを見て笑った。


“でも、私のせいでユウは苦しんでる。
こんな私が奥さんじゃ、ユウはきっと
幸せになんてなれない”


目に涙を浮かべながら自分の気持ちを文字にするレナの頭を、直子は優しく撫でる。

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