あたしの意地悪な弟
 「さぁなー」

 「なんであんたはそんなに呑気なの!?」

 いつもならすごく嫌がってサボろうとするくせに今日はやけに素直に掃除をしている。

 「明日は雨か・・・」

 「いいから早く手を動かせよ」

 こんなことを勇輝に言われるなんて。

 「あんたどうしたの、熱でもあるの?」

 「うるせぇな。そんなちんたらやってたら終わんねぇぞ」

 「はいはい、手を動かせばいいんでしょー」

 そう言いいながらあたしは棚の上にある資料が入った段ボールを見るとそこに、可愛らしい便箋を見つけた。

 あれなんだろう?

 あたしは便箋が気になり段ボールを引っ張り出そうとした瞬間、ダンボールの上にも資料が乗っていたらしくそれが降ってきた。

 やばい、当たる!!

 ぎゅっと目を瞑ったとともにあたしの腕が引っ張られ何かに包まれた。

 あれ?痛くない。

 そっと目を開けると勇輝の顔が見えた。どうやらあたしは勇輝に抱きしめられているようだ。

 そう分かった瞬間あたしの鼓動が早まった。

 「「・・・・・」」

 2人の間に沈黙が続く。

 いつもなら「お前は馬鹿か」とか罵声を浴びさせられるのに、なにこの沈黙。それになんでこんなに心臓うるさいの?

 「勇輝?ありがとう、もう大丈夫」

 「・・・・」

 返事がない。

 「勇輝!」

 今度はちょっと大きめの声で言った。すると、勇輝は俯きながらあたしを離した。

 「こんなベタなこと素でやるやつ馬鹿なお前くらいだ」

 ぼそっとそう言いまた掃除を始めた。

 「あははははー確かにねー」

 あたしは笑いながら言い、頬に手を当ててみた。

 熱いな・・・。

 
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