あたしの意地悪な弟
 その後、勇輝は一言も喋らず作業を続け、あたしもなぜか夢中になって黙々とやり続けた結果、1時間とちょっとで終わった。いや、最後結構適当にやったから終わらせたに近いかも。

 「よし!終わったー!!」

 「結構早く終わったな」

 「う、うん。そうだね」

 あの後からなぜか勇輝を見ると緊張してうまく喋れない。

 あたしはやり場のない目を近くの時計に向けた。

 「あ!今から行けばまだ生徒会の手伝いに間に合う!!」

 あたしは生徒会の方へ向かおうとした。

 「待って」

 そう言って勇輝はあたしの腕を掴んだ。

 「な、なに?」

 掴まれた所から徐々に熱が広がっていく。

 「そんなに会いたい?夕日先輩に」

 「え?んーうん会いたい」

 「なんで?」

 なんで?なんでって言われてもなー・・・。

 「んーー」

 考えてもなぜだかよく分からない。

 「前は、好きじゃないって言ってたけど好きになった?」

 勇輝は悲しそうな顔で聞いてきた。

 なんでそんな悲しそうな顔するの?

 「好きってわけじゃ、ないと思うけど・・・よく分からないよ」

 「あなやつのどこがいいんだよ。顔がいいからか?それとも優しくされたからか?」

 「別にそんなんじゃないよ。でも、夕日先輩のことあんなやつとか言わないで!それに勇輝と比べたら夕日先輩の方が断然かっこいいし優しいから!」

 そう言ってあたしは勇輝の手を振り払って歩き始めた。

 しばらく歩くとなぜか勇輝の悲しそうな顔を思い出した。

 なんであんな悲しそうな顔をしたの?

 考えたけどやっぱり答えは見つからない。

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