あたしの意地悪な弟
 「あれ?おかしいな・・・なんであたし泣いてるんだろう」

 わからない。綾乃と勇輝がいつからそういう関係だったのか。時々2人で教室を出て行ってなにを話しているのか。勇輝がなんであんなに悲しい顔をしたのか。

 やっぱり、あの言葉を聞いた時には既に・・・。あの時は、応援してあげようと思ったのになんでだろう。

 今のこの気持ちはなに?

 わからないことだらけだな。

 あたし馬鹿だからはっきり言ってくれないとわかんないよ。自分の気持ちすらわからないのに。

 さらに涙がこぼれ落ちる。

 あたしはとうとう道端でしゃがんで俯いてしまった。

 「凛ちゃん?どうしたの?」

 心配そうな声がし、あたしはみっともない顔をそっとあげた。

 目の前にいたのは優しく微笑んでいる夕日先輩だった。

 「夕日先輩・・・」

 「可愛い女の子をこんなに泣かせたのは誰かな?もしかして勇輝君かな?」

 夕日先輩はあたしにそう聞きながら、しゃがんであたしの涙を拭ってくれた。

 「・・・違うんです。あたしが勝手に泣いてるだけなんです」

 「そっか、凛ちゃんは優しいね。ここで話すのもなんだから、んーどうしよう俺ん家来る?」

 「へ?」

 急な誘いにさすがのあたしも涙が引っ込むほど驚いた。

 「せ、先輩?それはちょっとさすがに気が引けます」

 「あははっ、ごめんごめん。それじゃー凛ちゃん家に行ってもいいかな?」

 それもそれで問題あるけど、まぁ夕日先輩の家に行くよりはまだいい気がする。

 それに今は、独りでいるより誰かにいてもらった方が安心する。

 

 

 
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