あたしの意地悪な弟
 「こんにちはお二人さん」

 そこにはにこやかな笑顔と共に怒りの空気を漂わせている椿綾乃の姿があった。

 「2人でなにを話していたのかなー?」

 「いやーべ、別になにも話してないよ、な、なぁ勇輝」

  そんな利久斗の振りを俺は全力でシカトする。

 「シカトしないで!!(泣)」

 「大丈夫だよ勇輝君、今さら知らないふりしたってさっきの会話はほとんど私に丸聞こえだから」

 そう言って椿はニコリと笑う。

 むちゃくちゃこわい。

 「ま、それはいいとしてー。私は別なことで勇輝君に対して怒り奮闘中なんだよね」

 笑顔で言う椿だけど、目は笑ってない。

 「な、なんのことでしょうか・・・」

 俺は顔をそらしてとぼけた。

 すると椿は俺の頭を掴み自分の方へ向かせた。

 「てめぇしらばっくれるのもいい加減にしろよ」

 優しい声とは逆に言葉は全然優しくない。

 「綾乃ちゃんこわっ・・・」

 利久斗がぼそっと言った。

 「なに、利久斗君?」

 「いえ、なんでもありません」

 もうこいつに逆らえるやつなんているんだろうか。

 「で、勇輝君」

 「はい・・・」

 「自分がぁ凛ちゃんにぃなにしたかぁわかってる?」

 「わ、わかってます」

 俺は怒りの椿という恐怖の存在によって額に冷や汗がでていた。

 でも、次の瞬間椿の目から涙が流れ始めた。
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