あたしの意地悪な弟
 「私達と知り合う前の利久斗君になにがあったかは知らないけど、私達のことまだ信じられない?」

 その言葉を言った綾乃ちゃんはとても哀しそうな顔をした。

 でも俺は・・・。

 「綾乃ちゃんがなにを勘違いしているかわかんないけど、これが俺だよ」

 俺は笑顔で誤魔化した。

 「そっか、利久斗君がそう言うんだったら仕方ないね。でも私は待ってるからね、利久斗君が本当の自分を見せてくれるのを・・・」

 そう言って綾乃ちゃんは屋上から出て行った。

 「見せられるわけないだろ本当の自分なんて・・・」


 ――――――――――――――


 綾乃トイレに行くって言ってたけど帰ってこないなぁ。

 一通り話終えた後、綾乃がトイレに行ってくると言って行ったっきり帰ってこない。

 「なにしてんだろう・・・」

 「凛」

 この声は・・・。

 「勇輝・・・なに?」

 どうせまた必要最低限の会話しかしないだろうね。

 「ごめんな、凛」

 「え?」

 その言葉を聞いたあたしの耳には周囲の騒がしい音や声は全然聞こえなくなって、勇輝の声に一気に集中した。

 「お前のこといっぱい傷つけてごめんな」

 
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