あたしの意地悪な弟
 でもダメ。あたしには夕日先輩がいるんだから。

 そうはわかっていてもあたしの鼓動は反応してしまっている。

 「凛・・・」

 勇輝が何かを言いかけた時ちょうどチャイムが鳴ってしまった。それと同時に綾乃も戻ってきた。

 「あ、綾乃!どこに行ってたの」

 「凛ちゃんごめんちょっと用事思い出しちゃって・・・」

 あたしはその後、恥ずかしさからずっと勇輝のことが見れなかった。

 そして午後の授業も全て終わり、放課後になった。

 利久斗は昼休みからずっと戻って来なくて、綾乃はそんな利久斗を探しに行って、勇輝はどこかの掃除をしに行った。でも、勇輝の班の掃除当番の人が皆帰ったのになぜか勇輝だけが帰って来ない。

 あたしは夕日先輩が今日は一緒に帰れないと言っていたので、自分の席に座って綾乃が帰ってくるのを待っていた。

 「掃除が終わった後の放課後の教室って静かだな」

 外はまだ明るい。

 あたしの瞼が段々と重くなっていった。



 気が付くと教室は真っ赤な夕日に照らされていた。

 そして目を開けた先には、隣の机ではこっちを向いて気持ちよさそうに寝ている勇輝の姿があった。

 なんか可愛いな。

 「ふふっ」

 ついつい笑ってしまった。

 綾乃の席を見るとまだ荷物がある。利久斗探すのに手こずってるのかな?

 まぁ、あいつ隠れるの得意そうだしね。もう少し勇輝の寝顔でも眺めてようかな。

 そう思ってあたしは勇輝と同じ体制になって、勇輝の寝顔を眺めてた。

 そして気づいてしまった。

 この体制、もしかして勇輝もあたしの寝顔見てた・・・?

 そう考えるとだんだん恥ずかしくなって、あたしは顔が熱くなるのを感じた。
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