あたしの意地悪な弟
 あたしは勇輝の目を真っ直ぐに見た。

 「あたしは・・・」

 でも言えなかった。

 言えない、言えるははずがない。

 「言えよ、言えるんだろ」

 そう言って勇輝はあたしの腕を掴んだ。

 「いえ・・・ない・・・」

 夕日先輩ごめんなさい、あたしが先輩に甘えてしまったせいで。

 「だってあたしは・・・」

 「凛ちゃん」

 あたしは声のした方を振り向いた。

 するとそこには夕日先輩がいた。

 「生徒会の仕事早く終わったから来たんだけど・・・」

 先輩はなにかを察したらしく鋭い目つきで勇輝を見た。

 「勇輝君、その手離してくれない?凛ちゃんは俺の彼女なんだからちょっかいかけないでほしいんだけど」

 「チッ」

 勇輝は舌打ちをしてあたしの腕を掴んでいた手を離した。

 夕日先輩はそれを確認してあたしを自分方へ引き寄せた。

 「勇輝君。凛ちゃんを傷つけておいて今さらなにがしたいの?」

 「ははっ。いやー外野が素直になれとうるさかったんでー・・・それと俺もようやく決心が付いたんですよ。凛との今の関係をぶっ壊す決心が・・・」

 「ふーん。まぁ、凛ちゃんを散々泣かせておいてよくそういうこと言えるね。もう遠慮とかないんだね」

 「遠慮している状況じゃないですから」

 勇輝は爽やかな笑顔で言った。

 2人の間には火花が飛び散っているかのようにあたしには見えた。正直言うと今すぐこの場から立ち去りたい気分。

 

 
< 50 / 53 >

この作品をシェア

pagetop