雷獣
ドア開き洸希が乗ってくる後ろのパーカーを少しめくって手首のテープを外しだす。
ベリッベリベリ。
車の中はテープを外す音だけが響く。
「取れたよ。」
そう言われ自由になった手をパーカーの袖に通す遥香。
自分の手首を見るとかなりきつく巻かれていたのかテープの赤いあとが現実だと実感させた。
何処か一点を見つめながらぼろぼろと涙を流す遥香を見ていられなくて
洸希が遥香の頭を自分の胸に押しつける。
「......グス。だめ...だよ。.......叶葉さんに.....悪い...から...........グス。」
「叶葉は遥香さんの事、妹みたいに思ってるって言った。叶葉が大切に思っている人を何もせすにただ見ていたなんて叶葉に伝わった方が俺が怒鳴られるわ
なんで素直にこのまま泣いとけ。」
洸希の優しさにさらに感情が高まり洸希の胸で号泣する遥香。
洸希は何も言わずただ静かに胸を貸していた。
5分かあるいはそれ以上泣き続けていた遥香が泣き止む。
「グスグス。ごめん......もう...、大丈夫。」
そう顔を上げた遥香の目は赤く充血していて明らかに無理をしている様だったが
言葉をのみこんで
「じゃ、倉庫に向かうぞ」と車をはしらせた。