雷獣

「着いたぞ。拓哉さん達が帰ってくるまで俺、ここにいようか?」
倉庫に入り歩きながら聞いてくれる洸希。
幹部室には許可がないと入れないから多分扉の前にいてくれるということだろう。

「ううん、大丈夫。1人でみんなの帰り待ってる。」
そう笑う遥香は誰が見ても無理して作り笑いしてるようにしか見えなかったが
下っ端君達も洸希も誰一人声をかけられなかった。

一人で2階にある幹部室に向かう
その姿を息を殺して見守るみんな。

バタン。
「すぅー---、はぁー--。」
幹部室のドアが閉まり深呼吸する遥香。

「大丈夫、大丈夫」
そう自分に言い聞かせながらホットミルクを作る。

電子レンジに入れて温めを押す。
するとどこからかバイクのエンジン音が聞こえる。

「ハァハァハァ。......。」
その場にしゃがむ遥香。

「ハァハァ。大丈夫、これはあいつらじゃない、ハァハァ.....たく達のバイクの音。帰ってきた音。私は大丈夫。なにもされてない。未遂だ。大丈夫。」
しゃがんでブツブツと言う姿はまるで自分に言い聞かせている様だった。

エンジン音が大きくなり次第に聞こえなくなる。

「チーン。」
電子レンジが鳴る。
階段を急いで登ってくる足音が聞こえる。

遥香は立ち上がりレンジから出来上がったホットミルクを取り出す。
ドアが乱暴に開く。

「はる!」「「「遥香‼」」」
< 148 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop