雷獣

拓哉の近くで成り行きを見ていた夏惟、岳人が私に気付く。
二人も無傷とはいいがたく頬をなぐられたのか腫れている
私は夏惟にそっと近づく。

「平気?」

「うん。これくらいなんともないよ。」
沈黙が続く。それでも喧嘩は続く。
拓哉も無傷じゃない。瞼は切れているのか血が流れている。
口も切れたのかそこからも、今は服で隠れて見えないけれどきっと
服の下なんて痣だらけだけだろうな。
思わず顔を歪める私。
そんな私に気付いた夏惟が拓哉に声をかける。

「拓哉‼」

目線だけこちらに向ける拓哉。
その直後思いっきり相手を殴る
その瞬間私は見ていられず目をつぶる。
でも.........。

ガッッって殴る鈍い音
相手が殴り飛ばされ聞こえるうめき声
ズシャーーーと地面を派手に擦れる音
ガハッ。ゴホッッ。苦しそうない相手の声
私にとっては無縁な音、声ばかり

「なぁ、もういいだろ?」
シーンとした中、拓哉の声が響く。
そっと目を開く私。


「ガハッ。いや、まだだ。」
拓哉に殴られた男は仰向けに倒れていて起きようとした
そこへ起こさせまいと顔の真横に拳を振り下ろす拓哉。

「悠二さん、先代みたいになりますよ?引き際考えた方がいいっす。周り見てください。」

そう発言したのは同じ学校の遠藤先輩だった。
そっか、敵の”紫虎”って言ってたもんね。
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