雷獣
背筋が凍るような空気と今にも殺そうとしている目と目が合う。
「なぁ、そんなに気を引きたかったか?
命を粗末にしてまでこいつらの気を引きたかったのか?」
和真さんから訳の分からないことを言われる。
”え?なんのことですか?”
そう聞き返したいが私の体はガタガタと震え始め、冷汗があふれ出てくる
声が出したくても出せない。体が言うことを聞かない。
「和真さん‼それは勘弁して下さい、まだすべてを思い出した訳じゃないんです。」
拓哉が私の胸倉をつかむ手を放そうとしながら言う。
この人も何か知ってるの?なんでこの人はこんなに怒っているの?
そう思うのに声が出せない。
涙が頬を伝う。
そんな私をよそに和真さんは拓哉の静止を気にせず拓哉を突き飛ばした。
私に向かい話続ける。
「忘れていても思いだせ、雷獣のタブーをお前は犯したんだ。
どんだけ俺らが腹が立っているか、あいつらがどんな思いで今も傍に居るのか
お前には分からねぇのか?」
この人とはもう目を合わせていられないっところで陽気な声が聞こえる
「まぁまぁ、そんなに怒らないでって」
「そうだよ、ただでさえ怖いんだから」
階段から降りてくる顔がそっくりな2人
和真さんから目を逸らせずにいるとフワッと毛布をかけられた
それによりようやく和真さんと目が離せた
「そんなに威圧したら可哀想だよ」
「過呼吸になっちゃうかもしれないだろ?」
ねーと言いながら私の顔を見てくる2人
「「優之介さんあとは任せなさい〜」」
「んじゃ、彰吾、秋吾よろしく頼んだで
拓哉、夏惟、今日はもうええな?」
優之介さんが言うと2人は頷いた。
「ほな、夏惟は車回してきな、拓哉は必要なもん全部準備しぃや」
そんな会話をぼぅーと聞いていると毛布で隠れている私の顔を覗き込んできて
「気にせんくていいからな、ちゃんと拓哉が話してくれるで」
その優しい笑顔にコクンっと頷く。
「優之介さん、代わります。ありがとうございました。」
「ええて、和真がごめんなぁ」
「いえ、俺が和真さんが大事にしているの分かっていたのに
“和真さんなら分かってくれるはず”と甘く考えてた俺の責任ですから。」
「ほな、データとかは夏惟のパソコンに送るであとでゆっくり見てや」
そう言い優之介さんは私たちを見送ってくれた。