初雪が降るころに・・・
長屋を出ると1人の少年がこちらに向かってきた。

「雪乃。どこ行くの〜?」

「…皐月(さつき)…」

ここでは、私と同じ、変わった人間である皐月。

髪は、紫色。

そして、瞳はとても、とても深い蒼色。

「で〜?どこ行くの?」

ずっと笑っていて、表情が変わることがない。

私は、皐月のこと、信頼…というのはしていると思う。

でも、少し、怖い。

その貼り付けた笑みは、変わることはない。

「…壬生寺の辺りへ、散歩に行くの。皐月、来ないでね」

「え〜、行きたいんだけど〜?」

にこにこと笑ったまま心にもないことを並べ立てる。

10年も一緒なのだから、丸分かりなのだ。

「1人で行きたいから…」

すっと目を逸らし、皐月の横を歩いていく。

「…そう…」

ボソリと呟かれた言葉は、微かに私の耳に届いた。

だけど、その後に続いた言葉は…





「…誰にも、渡さないよ…?」





狂気に歪んだ笑みを携えて呟かれた言葉は…







「君は…ずっとずっと…俺のものだよ?」







私には、届かなかった。


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