タイガーハート
母親は外に恋人を作り、出て行った。
残された父親と二人生活を始めたが、
生活力がない父親との生活はすぐに破綻した。
それから俺は母方の祖父母に引き取られ、暮らしている。
『何か欲しい物があれば、何でも言いなさい。』
優しい祖父母の笑顔。
だけど俺が欲しかったのは、また再び両親と過ごす事ができる未来と、
普通の幸せだったんだ。
塞ぎこむ毎日が始まってすぐ、
あるテレビドラマが目に止まった。
それは全てをなくした主人公が勉強をし、知恵をつけて成り上がっていく物語だった。
“これだ”
直感でそう感じた。
それからは、がむしゃらに勉強した。
普通の幸せは普通に生活しては手に入らない。
自分で掴みにいかなくては。
けれど、
何故か心の穴は今でも埋まっていないような錯覚に陥る。