タイガーハート
放課後の約束
『希望者は、手を上げて!』
先生が綺麗に着席したクラスメイトに促す。
2ヶ月先に開催される文化祭のクラス委員を2名選出するためのホームルームが行われている。
「誰かいないのかー。」
呆れ声混じりに先生が言う。
…この空気は苦手だ。
後ろの席からクラスを見回す。
何故か伏見が俺を振り返っている。
…やれってこと?
なんで俺が。お前がやれよ。
と言わんばかりに眼光強めに見返す。
すると伏見は驚いた顔をして、前を向き直した。
その時、
“大学推薦”
の四文字が突如頭に浮かんだ。
そうだ、俺はこんなことに躊躇している暇はないんだ。
はい、と小さく手を上げる。
『お、小幡!やってくれるのか!』
先生の声にクラス中の視線が注がれる。
本気で言ってる?と言わんばかりの目線。
その時。
『はい!!!!あたしがやる!』
元気よく手を上げた人物が一人。
…伏見だ。
『ももがやんの!?
めっちゃ不安!』
女子生徒が囃し立てると、クラスからどっと笑いが起きた。
まかせとけ!と笑顔でたんかをきる伏見。
気付かれないように盗み見たその笑顔がすごく眩しくて、胸が苦しくなった。