タイガーハート
それからと言うもの、
金曜の放課後の約束が照れ臭く、
伏見を意識的に避けてしまっていた。
『あはははっ!!それいいね!
やばいっ!!』
教室の真ん中では女子グループに混じって、伏見が笑っている。
視界の端にそれを捉えると、
心臓をぎゅっと掴まれるような感覚に襲われる。
いつもどこかで伏見を意識している自分がいた。
『調子狂うね』
前の席に腰掛けた隼人が、クラスを眺めながら口を開く。
「何が」
問いかけるが、隼人はふっと笑い
紙パックの烏龍茶に再び口をつけた。
「そんなんじゃない」
小さくつぶやく。
わかっている。隼人は何も言っていない。
こんな気持ちは一瞬のものだ。
すぐに通り過ぎる。
今までに彼女はおろか、女友達さえ出来たことがなく、免疫がないだけだ。
ただ、それだけ。
約束は明日。