タイガーハート
野並さん
『小幡、ちょっとこれ、資料室まで運んでおいてもらえないか』
授業に使った資材の片付けを命じられ、帰りが遅くなった。
玄関を目指し、静まり返る廊下を歩く。
この方がかえっていいかもしれない。
人混みは苦手だ。
そんな事を考えていると、どこからかくぐもった声が聞こえた。
『ーー!!』
『ーー!!』
小さくて聞き取れない。
視聴覚室?
廊下突き当りの視聴覚室。
この部屋は滅多に使われることは無い。
方向転換をし、足を向かわせる。
扉の前に立つと、中から声がした。
『離してよ!!』
『何でだよ!こんなに好きなのに!』
痴話喧嘩かよ、と思い引き返そうとする。
『本当にやめて!来ないで!!』
あまりにも緊迫し過ぎではないか。
これはなにかおかしいと思い、
引き戸に手をかけ一気に戸を開ける。