タイガーハート
「どうした?」
伏見の元へ歩を進めながら問いかける。
『だからぁ!
梨央が好きなんでしょ?』
伏見が言った
瞬間。
伏見の右手が手すりから滑る。
「伏見っ!!!!!!!!」
二人の体が床に倒れこむ。
伏見の頭を守るように抱きとめる形になり、俺の体の上に伏見の体が乗っている。
さらさらの髪の毛が手の甲に触る。
沈黙が訪れ、どちらかの鼓動だけが聞こえる。
『ことら…』
かすれる声。
まただ。
心臓を掴まれるような苦しさ。
『あたし、小虎のことが
好きかもしんない…』
「うん…」
俺の世界になかった感情が、
小さく芽を出した。