タイガーハート
“小虎”
『…とら!小虎!』
騒がしい声に呼ばれて目を開ける。
白い天井。
『だ、だいじょうぶ!?』
声のする方に視線を向けると、先程の絶叫バッターが居た。
その後ろには保健医。
『伏見さんが蹴ったボールが、隣のコートにいた小幡君の頭にクリティカルヒットしたのよー。』
優しい声で言う。
…何言ってんだ。
さっきの授業は。
「…バスケですよね?」
『う、うん…ごめんなさい…』
伏見が俯きながら気まずそうに答える。
お前は小学生以下か。
口にする気力もない。
腕で顔を覆い、横を向く。
「大丈夫だから、行って」
『でも…小虎…』
「いいから。
あと、バスケットボールは蹴るな」
「うん…本当にごめん…」
後ろで声がし、続いて部屋を出る音がした。
視線を再び白い天井へと戻す。
デジャヴのような、とても懐かしい感覚に襲われた。
いや、違う。
何かを振り払うように目を強く瞑った。