タイガーハート
そこへ違う人の声が降ってきた。
『小虎くん、ちょっといい?』
顔を上げると、そこには野並さんが立っていた。
『清水くんの事で、相談があるんだけど…』
この間の出来事から、意識して野並さんを避けていた。
何を考えているのかわからなくて、つかみ所がない。
野並さんと関わると、何か起こりそうな気がしていた。
『放課後、視聴覚室に来てもらえる?』
伏見は、黙ったまま野並さんを見上げる。
視聴覚室。
野並さんを助けた、あの場所。
「ん、わかった」
野並さんを一瞥し、返事をする。
目の前から視線を感じたが、見てみぬふりをする。
『行くんだ…怪しい』
野並さんが去ったあと、伏見が小さくつぶやく。
「隼人のことだ。
あいつら何かあるみたいだし」
言葉を返しても、伏見の表情は晴れない。
チャイムが鳴る。
それを合図に、お互いに言葉を飲み込んだ。