タイガーハート
鞄に荷物を詰めていると、
教室の真ん中から視線を感じた。
視線を返すと、
ふんっ!と効果音がつきそうなくらい、あからさまにそっぽを向いた。
やっぱり馬鹿だ。
でもそんなところも、とてつもなく可愛く思えた。
鞄を背負い、伏見の席から1メートルほどの場所まで近づく。
横目でそれを捉えたまま、伏見は固まっている。
「伏見。
後で連絡する。」
踵を返し、教室を出る。
数メートル歩いたところで、携帯が振動する。
新着メールだ。
伏見 百花
待ってる。
浮気したら、コロスから!
携帯を閉じる。
やっぱり伏見には敵わない。
こんなに夢中なのに。
「浮気なんか、できるかよ」
淡い気持ちを、無機質な廊下へ言い捨てた。